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詩のような待ち合わせ
率直に言うと、今、梅雨真っ最中だ。ついでに言うと今は五月晴れというやつではない。
そう、とりあえず大雨だ。
目の前に少しずつできてゆく少し濁った小さな池を、丸い丸いゴムが踏んづけていく。それが
繰り返し何度も何度も続くのを、何度も何度も見てた。ずーっと、ずっと。
ズボンの裾の下からだんだんと濡れていく。だんだん、だんだん、濡れていく。
「こんなことなら、こんなパン屋の前で待ち合わせするんじゃなかったなぁ…」
後悔の念からひとりでに愚痴がこぼれる。準備は万端、時計も財布も携帯も誕生日のプレゼ
ントも全部持ってる。この前給料日だったので財布は珍しく膨れ上がってる。足りないものはこ れも珍しく無い。けど肝心のあいつが来ない。
後ろのパン屋は定休日……しまった。
「そういえば、あいつと付き合い始めたのも梅雨の時期だったよな。」指を折りながら独り言を
言う。車が良く通る道路。そして人はあまり通らない道路。「もう四年か。」
憎ったらしい雨水が僕の靴の中まで浸水してきた。そろそろやばい。上空から空気を伝って
優雅なスカイダイビングを楽しんでる水滴達が、僕の周りの”世界”に着地し”世界”の熱を奪っ てゆく。そして熱を奪われた”世界”は、僕から熱を奪ってゆく。そうやって廻ってる気がした、 今。
上を見上げると久しぶりに”地球”に乗っかってる感じがした。下を見ると”地球”が丸いってこ
とをすぐ忘そう。こんなにも廻ってるのに。
「ちくしょう…あいつめ、こんなに遅れやがって…来たら絶対文句言ってやるからな。」
空しい独り言が雨音に溶け込みなお空しい。響かないことの怖さ。
僕の時計の針は止まることをまだ知らない。去年買ったばっかりのやつだ。
ところで、なんかさっきから胸に何かが引っかかってる。何か忘れてる、何か足りない。
うーん…なんだろう…気になるなぁ。なんだろう…なんだろう…
こうやって雨の中で彼女を待ってる俺も少しは絵になるな、と思いつつ、なにを忘れてるのか
必死で思い出そうとした。あと一歩、喉まで来てる。あぁ、あとちょっと。
こういうのはなかなか思い出せない。
誰だってそうさ。
と、僕の視界にピンクの傘が現れた。最近雨ばっかり降るのであいつの傘の柄も、風で少し
曲がってしまった骨も覚えてしまった。
やっと来た。雨に濡れながら、走ってくる。ピシャピシャやりながら、こっちに来る。
「待った?」
あいつが少し息を切らしながら、僕にむかって言う。
「いや、全然。」僕が少し微笑みながら返す。「さっき来たところ。」
梅雨の時期独特のあのしめっぽさを体に巻きつけながら、霧がかった景色を幻想的だと思っ
た。
うん、思い出した。
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