第九回


また逃走




「巣だって?!冗談じゃない!!」レイスが船の上でどうしようもなく叫ぶ。
「実質俺らはやつらに囲まれてるってことか…」ダロークが激情したレイスを傍目にため息をつ
く。「めんどくせぇな。」
まだ夜があける気配はない。タルミスは腹の減り具合でそう感じていた。「で、どうすんのさ?」
「しかたないのぉ…もうすでに完全に眼を着けられているじゃろう…強行突破しかあるまいな。
幸いあの洞窟までは深い森が続いておる。隙を見計らってどっかに隠れてやり過ごすのが一
番「べたー」じゃろうな。」ラーンが言う。
タルミスは「べたー」なんて言葉つかうなよじいさん、と思いつつも言えばたぶん黒こげ(良くて
廃人)になるのでやめておいた。
「じゃぁそれでいこう。全員船を下りる準備をしておけ。多分村に入れるだろうから余分な食料
は置いていけ。村で補給する。」ダロークが三人を目の前に演説する。タルミスは自分のリュッ
クの中を見た。
「余分どころか、今食うもんすらないよ。」タルミスがため息混じりに弱弱しくダロークに抗議す
る。
「……………………まぁとにかくだ!走れるようにしとけ、とおれは言いたいわけでだな……」

夜がもうすぐ明ける。


「さぁ走れ走れ走れ!!!…」ダロークが岸に船を付けるとみんなを囃し立てた。「…ん?じい
さん……はしれるのか??」
「無理にきまっとるじゃろ、ばかものが。お前が背負っていくんじゃよ、背負って。」ラーンがダロ
ークに向かっていう。もうすでにおんぶされる体制だ。
「いや。おれはもう年だ。三百五歳にもなるしな。おいレイス、お前が背負え!」ダロークがレイ
スに背負わせようとする。
「はぁ?なんでそうなるんだよ、肉体は老師のんだろうが。お前が背負えよ。」レイスが抗議す
る。
が、結局レイスが背負うことになった…
「おい!このじいさん予想以上に重いんだよ、ちょっと早すぎるぞ!!」
レイスが走りながら叫ぶ。前から出てくる敵はダロークとタルミスが排除してくれているのでレイ
スはいまだ剣を振るっていない。ただラーンを背負うのに邪魔になるので剣は背負わないで手
に持って帯刀していた。
そのときである、後ろから追ってきた「一匹」がレイス達においついて横の茂みから飛び出して
きた。レイスは、ラーンを背負っていてもそれなりに速度がでていたので後ろからは追いつか
れることはない、と思っていたので、このことにすこし怯んだ。そして抜刀するのがすこし遅れ
る。
しかしレイスの手に斬った感触はない。目の前には灰とかしたスカスカの「あれ」があるだけで
あった。そしてレイスの背中から笑い声が聞こえた。




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